学会の話が続きます。
金属アレルギーの教育講演に参加しました。
当院は開院当初より金属アレルギーの検査を行っています。
金属アレルギーの検査は血液検査で行うことはできません。
パッチテストといって、金属ごとの試薬(通常17種類)を腕や体に貼り、かぶれの反応が出るかどうかをみて行います。
金属アレルギー、というとまず思い浮かべるるのは、アクセサリーなど装飾品のかぶれ、ですよね。
例えば、ピアスをすると痒くなる、ネックレスで痒くなる…
プラチナアレルギーがあって、せっかくの結婚指輪がつけられないという人や、
ベルトのバックル、時計でかぶれる方もいます。
特に汗をかきやすくなるこれからの時期は、金属やイオン化して溶け出し、かぶれを起こしやすくなります。
汗で金属が溶け出すんです!
意外な感じもしますが、ほとんどの方は金属をただ触れるだけでは何も起きません。汗をかいて、金属が溶け出すことでアレルギー反応が出てきます。
アクセサリーなんかは、見るからに金属で出来ているのでイメージしやすいのですが、変わったところでは革製品のかぶれ、も金属アレルギーが関与している場合があります。
革製品?でなぜ金属アレルギーなんでしょう。
実は
レザーのような動物の皮革を使って、カバンや靴を作るためには「革をなめす」という作業が必要です。この「なめす」時に、「クロム」という金属を使っているのです。
金属アレルギーの代表的なものは装飾品によるかぶれですが、それだけではありません。世の中は金属であふれています。調理道具や、お金や、文房具などなど。金属に触れる機会は装飾品以外にもたくさんあります。
…以上、金属によるかぶれの話をしてきました。
かぶれ(接触皮膚炎)のほかにも、金属アレルギーが皮膚科の病気の原因になることが知られています。
たとえば
扁平苔癬
異汗性湿疹、汗疱
掌蹠膿疱症
などの病気です。
いずれも皮膚科では珍しくはない疾患ですが、難治性でなかなか良くならないことが多く、原因もはっきりしない。
しかし一部は金属アレルギーが原因になっている場合もあるので、もう何年もよくならない、なんて時は一度金属アレルギーのテストをしてみることをお勧めします。
また別の金属アレルギーが関与する(と思われる)疾患について。
今日勉強したのですが、あまりにメジャーな病気なので驚きました。。。
それは
アトピー性皮膚炎
正確には「内因性アトピー性皮膚炎」といって、乾燥肌とIgEを介した通常のアトピーとは区別して呼んでいます。
通常のアトピーは、子供の頃に発症し、カサカサ肌で、ハウスダストやダニアレルギーを持っている
ことが多いのに対して
内因性アトピーは、多くは大人になってから発症し、乾燥がそれほど強くなく、アレルギーの血液検査をしても特になにも出ない。しかし、金属アレルギーの検査をするとニッケルやコバルトが陽性。金属に触れていない全身にアトピーの湿疹をみます。
患者さんの汗の成分を分析すると、汗の中に高濃度のニッケルやコバルトが検出されるんだそうです!
そのニッケルやコバルトはどこから来たか…
分かりやすいのは歯科金属です。微量に溶け出し影響を与えている可能性がありますね。
もうひとつ重要なのは食事です。たとえばチョコレートや豆類はニッケルやコバルトを多く含んでいます。
それらを大量に摂取することで、その金属を含んだ汗が出て、その汗で炎症起こし、アトピーが悪化。。
ちなみに内因性アトピー性皮膚炎はアトピー 全体の20%くらいを占めているようで、女性に多いそうです。
普段の診療でも「内因性アトピー性皮膚炎」かな?と思われる患者さんがいらっしゃいます。機会をみて、金属パッチテストを進めてみよう。
あと歯科金属のお話。
ここ最近の保険診療の改訂で
金属アレルギーの既往がある場合に限り、保険内で金属を使わずに、歯科治療ができるようになってきています。
以前は、白い詰め物をしたい場合、前歯など決められた歯のみ保険診療が可能で、奥歯は全て自費診療でした。
いざ金属アレルギーがある、と分かっても、口の中の金属をすべて入れ替えると、ものすごくお金がかかるので、とても患者さんには言い出せずにいました💦
保険診療のこの改訂、金属アレルギーの患者さんには朗報ですね🎶
もしかして金属アレルギー?
そんな場合は、歯医者さんに行く前に金属アレルギーの検査をしてみてもいいかもしれません。
金属パッチテストは、まず診察させていただき、予約制で行っています。
健康保険が適応され、検査代 1160円(3割負担の場合)です。
そのほかに、初診料や再診料が必要です。