昔むかし、傷があると消毒やガーゼでなおしていました。
オキシドールや、イソジン、傷ドライ・・・そんな消毒薬が どこの家庭にも常備されていました。
かれこれ 17年前、私が医師になったころはまだ診療の場で、消毒薬を使っていました。
しかしほどなくして、「湿潤療法」が一般的になり、外来の場でまったく消毒を使わなくなりました。
なぜなら
消毒しない方が、ダントツに早く!きれいに!なおるからです。
かれこれ15年以上、傷にはいっさい消毒薬を使っていません。
そもそも、消毒薬は、細菌の細胞壁のタンパク質を変性させて壊すものですが、
ばい菌だけをやっつけるのではなく、自分の健康な細胞(傷をふさいでくれる細胞)の細胞壁もタンパク質でできているので、消毒をすると、自分自身の細胞も一緒に壊してしまいます⚠
そして傷がなおるときに必要な細胞は、乾燥すると働けなくなるため「浸出液」がでて、細胞の動きを高めてくれるのですが
傷にガーゼなどを直接はると、浸出液を吸い取ってしまい、傷をなおす細胞が動けなくなっていまいます。
また「浸出液」の中には、傷を治そうとする「細胞成長因子」がたくさん含まれ、湿った中でのみ作用することができます。
そして「浸出液」の中でなおった傷は目立たずきれい✨
そう、あの傷からでる「ジュクジュク」した液は、
膿ではなく、治るときに必要な液体なのです。
そのため
傷に消毒をする (⇒傷をなおそうとしている細胞を殺す)
乾燥させる (⇒傷を治してくれる細胞を動けなくする)
ことになる
加えて、傷に消毒をしたら、しみて痛いし、ガーゼが傷口にくっついて、はがすときにも痛いですよね。
傷に消毒してそこに直接ガーゼをはる行為、それは
わざわざ痛い思いをして、傷のなおりを邪魔して、傷跡も汚くなる行為💀
医療の場で、患者さんに傷を消毒していた時を思い出すと
消毒しないことのメリットしか感じません。
私が消毒薬を傷に塗ることは今後も絶対にないでしょう。
「傷」というのは
転んだ傷、擦り傷、切り傷はもちろんですが
とびひの傷、やけどの傷、手術後の傷、ピアスを開けたときの傷・・・すべてあてはまります。
患者さんに消毒しない話をすると
「消毒しなくてばい菌は大丈夫ですか?」
と聞かれます。
確かにとびひなんかは、ばい菌の傷そのものですからね。
だいじょうぶです!!
洗えばいいんです!
石鹸で泡をたてて優しく洗いましょう!!☺
傷には必ず、一定の数の「ばい菌」はついています。
しかしこれはただ くっついている だけ。(定着)
化膿しているのとは違います。(感染)
定着している菌は、洗えばすぐに流れていきます。
「洗うのが怖いです、本当に洗って大丈夫なんですか?」
大丈夫です!洗わないで大事にしていると、余計にばい菌がくっついてしまいますよ。
とびひのような感染創はたしかに石けんで洗う方がいいですが
普通の傷であれば水道水で洗い流せば十分。
それで表面の菌は流れて行ってしまいますよ。
こする必要はなく、泡はのせるくらいで大丈夫。
そしてワセリンやゲンタシンのような軟膏をたっぷりとのせたら(乾燥しないように)ガーゼで覆ってもいいと思います。
きれいな、すり傷などでは、市販のキズパワーパッドのような被覆材もとてもよいのですが
ばい菌がついたまま貼って密封してしまうと、蒸れて菌が繁殖し、化膿(感染)してしまうこともあります。
キズパワーパッドをはる前には、必ず傷を洗った方がいいです。
そして、すでに化膿してしまった傷は消毒だけではどうにもなりません。
その時は、抗生剤の内服薬で治療します。
とびひは消毒ではなおりません。痛いだけで可哀そうなのでやめましょう。とびひは飲み薬が必要です。
🌸傷の話のまとめ🌸
傷は「消毒しない」「乾かさない」
傷は水道水と石けんで洗う
傷を乾燥させないように、軟膏を多めにつける(塗るのではなく のせる ような気持ちで)
または、傷を乾燥させないように、被覆材(キズパワーパッドなど)をはる
感染してしまったら、受診❣